13ヵ国にわたるヨーロッパの旅 1
11月8日、世界一周132日目。
ヨーロッパ最終地点フランスはパリにて。
まさか中東にいた頃はこれほど永くヨーロッパに居座ってしまうとは思ってもみなかった。物価が高いゆえ、さっさと周ろうなんて馳せていたから。
トルコを出発してヨーロッパ1ヵ国目ギリシャに到着したのは、確か10月になった頃だ。
この頃はまだ陽が照らしていて、Tシャツの中を風が泳ぐ。
人生初めてのヨーロッパに緊張と不安と少しの期待を抱えながら踏み込んだのを今でもよく覚えている。明らかにアジアとは違うそれに目を醒ます。
夢にみていたギリシャはもっと輝き、綺麗が行き届いていて白が咲く街だと思っていた。でも実際足を運んでみれば、街中に落書きがあって、地下鉄は汚れていて、ホームレスも物乞いもいるし、ゴミも腐る程落ちているし、路駐も沢山いるし。
あらためてうまれながらの固定観念は恐ろしい。
アテネからフェリーでサントリーニ島やザキントス島へも渡った。お金こそかかったが、カップルばかりで萎えに萎えたが、行って良かった。
サントリーニ島では世界一のサンセットに泣いたり、
ザキントス島では自転車で片道4時間かけてずっとみたかった景色を手に入れたり、
夏の匂いがした。
ギリシャを抜けた後は、ひたすらアドリア海沿いに国を超えていく。
アルバニアはバンの乗り換えだけで横目に通り過ぎてた。
モンテネグロに1泊だけすることに。
モンテネグロの首都ポトゴリッツァは国の中心とは思えないほど、静かでこじんまりとしていた。でもそこには生活をこなす人たちがちゃんといて、街として充分に機能していたはずだ。物価もヨーロッパにしてはさほど高くない。あたたかみがあって落ち着いた場所であった。何もないようで何かある。
出発以来切ってなかった髪を切ろうと思い立った。
適当に歩いて適当に見つけた理髪店に入った。おっちゃんに7ユーロでお願いする。髪の切り方の英語なんて知らないので、持ち合わせの単語とジェスチャーでなんとか伝える。案の定前髪をパッツンにされる。でもいいおじちゃんだった。相撲を知っているらしい。
翌日、早起きして朝7時のバスに乗り込む。とても寒かった。ここが始発らしく、誰も乗っていなかった。今日も海沿いの崖を進んでいく。
見えた。
世界一周する前からずっと行きたかった場所。確かいつか見た中村仁美のアナザースカイがきっかけだった。
ベストシーズンは夏らしく、観光客も多くない。
「魔女の宅急便」の舞台ともいわれる旧市街は、歩いていれば思わずルージュの伝言が流れてきそうな、おしゃれな街だった。相変わらず物価はエグく高い。
お金がないバックパッカーは旧市街に宿をとらないほうがいいと思った。多少歩いてでも少し離れたところに、10ドルぐらいで泊まることができた。それでも高いがヨーロッパは致し方ない。
2日目は街の裏に位置するスルジ山を登る。標高400mほど。
ロープウェイは高いので歩きで40分ほど。
ひたすら砂利道をくねくねと。スニーカーで良かった。登りながらの景色もこれまた素晴らしい。
これは絶景。水平線が果てしない。
3~4日の滞在を終え、港からフェリーに乗り込む。初めて船で国境を越えるのだ。
つづく。